当社は就業規則上、2024年12月まで第4,5土曜は出社日でした。年間休日は第1,2,3土曜に日曜、祝日、年末年始を加えて105日。月末は週休1日となるため週40時間を超過しますが、1年単位の変形労働制を採用して年間労働時間を法定限度内に収めています。
とはいえ、働き方改革が本格化した今日においてはもはや時代遅れ。ハローワークでも「求職者は第一に休日数をチェックします」求人票を指導されますし、何より「自分がこの条件で働きたいか」を自問したとき、やはり悩んでしまいます。
一方、職人が異口同音に語る業界常識は「電気工事屋は休みがないのが当たり前」。私が承継した頃は、休日でも仕事があれば出動していました。工事担当者も指名で仕事が来ればうれしいもの。頼まれれば土日夜間関係なく「仕方ねえ、やってやるよ」と緊急出動します。
しかしながら、このようなムチャぶりが元請から一社下請企業に対し日常化に行われると様相は変わってきます。担当者間で携帯電話を通じた口頭での直接発注が常態化しすると、実質的な「上司の部下」の関係が生じます。といってもその指示内容に肝心の請負金額や当日キャンセルなど危険負担に関する取り決めはなく、休日手当を加味すると赤字なることもしばしばですが、担当者個人は会社から給与として受け取るので、懐は痛みません。そして当然ながら、会社に対してはすべて事後承諾です。これらは建設業法令遵守ガイドラインでも禁じる違反行為ではありますが、「元請担当者の個人的なお願いに対し下請担当者が勝手に応じた」といわれると、反論てきません。もとより、一社下請は社内外の全員が「断る選択肢はない」と思い込まされているので、結論は変わりません。この状態で事業承継した私はこれを脱するためのKPIとして一社依存率の低下を自らに課し、10年間で10%台まで低下させました。
働き方改革という追い風
新たな顧客を開拓する中で、より苛烈な労働条件の現場もありました。新参者の当社がありつける現場は工期がひっ迫した「火を噴く」現場も多く、そこに「初お目見え」として熱く燃えた工事担当者が入ると「毎日が文化祭」と化します。丁度千葉市新規事業創出支援事業の最中に過労死ラインを越える長時間労働が発生し、プロジェクト中断を余儀なくされたこともありました。建設業法では経営業務の管理責任者に対し5年以上の経験とともに専任義務を課していますが、この意味を思い知ることとなりました。ここで踏ん張ってこの苦い経験を対策とともにレポートにまとめたところ、建設業人材育成優良企業表彰を受賞することとなりました。
さて、働き方改革については運送業などとともに建設業は大きな社会問題としてニュースに取り上げられていますが、下請多重構造解消の観点からは朗報です。これまで月末の現場対応を気にして第4,5土曜日を出社日としていましたが、今や仕事はそれほど入らず、残業振替や年次休暇の取得日となっています。そこで、土曜日を完全休日すとともに年末年始を休日から外し一斉年休取得日とすることで調整し、年間を119日としました。なお、本改定により年休取得日はお盆と合わせて7日間となりますが、一方で年休の自由取得5日間の確保も必要です。そこで、年休を初年度から12日付与することで、整合性を取りました。

社内報vol.113より 年間休日120日には踏み込めず、、
ドキュメント 2024年12月28日(土)
工事担当者の頑張りで年末進行も順調に消化し、最後の土曜勤務日は全員終日事務所勤務となりました。
全員揃ったら、まずは大掃除。これまで年末は最後まで現場施工があるため、業務として事務所大掃除を求めることもなかったので、全員一斉での掃除は昭和時代の事務所引越以来、かも知れません。
当地には、平成元年に移転しました。千葉市郊外山間部のミニ開発分譲地でしたが、当時はバブル絶頂期、地価も現在とは文字通り桁違いだったようです。所有者は投資目的で購入した都内事業者も多かったようですが、程なくバブル崩壊。現在は当社と同業の一社のみが使っています。
両親はともに農家出身。戦後の物資不足を経験し、物は大事にとっておきます。さらに、分譲地内の買い増しを進め、保管する場所は十分にあります。必然的にモノが増えますが、古い資材、現場撤去品、前所有者の残置物、元請から無償保管を求められそのまま放置された機器などあり、収拾がつきません。めったにない全員集合日を利用して選別整理を進めました。
また、書類も処分の対象です。重要書類は実家兼本店に保管していますが、元請仕様の日報など日常業務に関する書類が20年分程滞留しています。今回、初めて機密書類の溶解サービスを利用しました。後日収集された書類は段ボール32箱で重量390kg。

追上がった廃棄書類

午後からは、全社会議を行いました。元請からの通達が全てだった一社下請時代とは違い、社内の情報共有も企業として大事な仕事です。まずは、就業規則改定の説明と意見聴取から。いつもは自分で行いますが、今回は開業直後の社会保険労務士事務所テイク.エスの竹内先生に、コンプライアンスチェックを含めて手続きをお願いしました。さらに「小規模企業における就業規則改定のリアルが勉強できるかも」という中小企業診断士の老婆心が働き、当日会議にも同席いただきました。
次に、事業承継後10年間の足跡を振り返りました。同じような仕事を続けてきたようでも、請負元構成比、現場の分布、工事単価などが大きく変わり、それに応じて現場で求められる能力も変わっています。当社は私と同世代が多く、気が付くと50歳を迎えています。生涯現役で職人を続けるといっても、中には年齢制限を課す元請もあります。そのため2年前には当社初の定年退職も出ました。今後どんな仕事で、どう働き、生きていくか。その視点で働き方改革を見ると、違った景色が見えてくると思います。
最後に参考情報として、最近の建設業の動向に関する国土交通省建設課長の講演と、武蔵野大学ウェルビーイング学部による「幸せの定義」を紹介しました。幸い当社は小規模企業、自分の意見でルールを変えることも可能です。中小企業診断士的には「ここで自分のSWOT分析を行って」とけしかけるところですが、自分も含め、今後を考えるきっかけになればいいな、と思い年末年始休暇に入りました。