敬愛学園高校(千葉市稲毛区)では、1年次における総合的な探求の時間についてinageimageと銘打ち、「身近な人をhappyに」をコンセプトとして、企業など地元団体(サポーター)が提示する課題に取り組みます。当社は昨年から参加し当社付近の路線バス廃止についてお題を提示しましたが、今年度は千葉市から委嘱を受けている資産経営推進委員の立場から提示しました。

協力団体が横断幕に掲示

協力団体が横断幕に掲示


 千葉市では、資産保有の最適化への取組みを推進し、将来にわたり市民サービスを 安定的かつ継続的に提供することを目的に、2020年に公共施設等総合管理計画を策定し、昨年その見直しを行いました。153ページを数える大作で、人口動態や経済状況などのマクロ的視点とともに、市民需要の変化や設備の老朽化などの評価基準、さらにはこれまで行った改廃などの事例や現有資産の個別評価も掲載されています。私が参加する資産経営推進委員会にも諮問されましたが、元不動産投資ファンドのアセットマネージャーとしては、資産管理における民間と公共との共通点と相違点を知るいい機会となりました。今の自営業の立場としては、外部資本を受けてないこともあり、頭の中は民間よりもむしろ公共に近いかもしれません。
 さて、同校の1年生は特進コース、スポーツ推薦を含む進学コースなど計400名以上が在籍していますが、inageimageではこの区別なく興味のあるテーマごとにチームが組まれます。私のお題に対しては、10名の生徒が2班に分かれ挑戦しました。生徒には総合管理計画を印刷して渡し、これを読み込んでもらったうえで、千葉市保有の資産を一つ取り上げて、有効活用提案をお願いしました。とはいえ、昨年の生徒は採算性や実現性など難しく考えすぎていた印象があったため、今年は「とにかく面白いものを作ろう」と呼び掛けました。ストーリーも具体的に例示し、在住、在学する市民として「千葉市資産の使い方はもったいない、自分ならここに、これを作る!」のイメージを共有しました。
 実はこれ、私が大学社会工学科で習った地域開発計画演習そのものです。都市計画全体との整合性や法規制、環境面など地元に与える影響など制約は多々はありますが、まずは自分自身が面白いと思うアイデアを出し、伝えることが第一歩です。
最初の課題提示から4か月後、生徒は毎週集まり検討していたとのことで、ついに最終発表が行われました。各教室とも6班程度に分かれ順次発表します。

一班「ショッピングモールを作ろう!」

 これはまさに私の鉄道会社勤務時代の本職。候補地は学校から離れた郊外のロードサイドで、きちんと調べたことが十分うかがわれます。さらにここに明石市の子育て支援5つの無料化を組み込むことで、高校生とて将来も住み続けたい街のイメージに厚みを持たせました。

1班は商業施設の候補地選定

1班は商業施設の候補地選定

二班「テーマパークを作ろう!」

 候補地は住宅地の中にある0.64haの街区公園ですが、実際に現地を確認し「あまり使われていない」と評価したうえで選定しています。実現性については、同程度の敷地規模で成立している遊園地として花やしきを例示し、最寄り駅など交通アクセスも勘案して成立可能性が高い立地であることを示しました。さらに、プレゼンテーションでは荒涼とした現状写真を提示し「ここを何とかしたい!」という想いを伝えます。近所に住んでいるメンバーがいたのかもしれませんが、老若男女が楽しめる施設という地元愛溢れる提案ができました。

テーマパーク開発候補地の現況写真?

テーマパーク開発候補地の現況写真?

 最終発表修了後、今年初の試みとしてサポーター団体の打ち上げが地元の居酒屋で行われました。学校主催の異業種交流会の趣ですが、地元のみならず東京都内や遠くは大阪からも参加とのことで、地元民としてはその広域さに驚きました。また、系列の敬愛大学も同敷地内にあり、今回サポーターとして参加しています。4月に大学新校舎が竣工しますが、これは私が都市計画審議委員を務めていた時に地区計画として諮られたもので、感慨深く話を伺いました。

敬愛大学高層棟 今春竣工

敬愛大学高層棟 今春竣工


 教頭先生による乾杯の挨拶では、生徒がinageimageで考えたアイデアは、2年後に大学総合選抜入試のネタとして活かされているとのこと。現在国公立大学受験の真っ最中ですが、従来型の学力試験一辺倒から時代が進み、生徒が求められ、そして学ぶべき能力の多様性が増していることを実感しました。