私も当社に来て早9年近く経ち、気が付くと後から入社した若手社員も3割を占めるようになりました。電気工事を行うためには電気工事士免許が必要ですが、当社に経験者が入社することは稀です。そのため入社最初の仕事として資格試験勉強が待っていますが、最近はポリテクセンターなど職業訓練施設で予め取得しているケースも増えてきました。
 ポリテクセンター(正式名称は「職業能力開発促進センター」)は、独立行政法人高齢・障害・求職者支援機構が運営する職業訓練施設です。求職者、在職者、事業主、支援機関などに対する研修や就職支援を行っており、当社でも修了生が働いています。全国各地にありますが、中でもポリテクセンター千葉では1970年に技能五輪国際大会が日本初開催されるなど老舗のようです。ちなみに、当社では機械警備工事の現場としてもお邪魔したことがあります。

ポリテクセンター千葉セミナー棟 前面道路は稲毛-若葉区境

ポリテクセンター千葉セミナー棟
前面道路は稲毛(左)-若葉(右)区境


 さて、在職者向け訓練は製造業や建設業などに関する幅広い講座が用意され、またオーダーメイドセミナーとして貸切団体受講も可能で、当社でも3年前に全員でLAN研修を受講しました。当社では現場都合で全社員が一同に会する機会がないため年1度を目標に全社イベントを企画していますが、全員が車通勤で「飲み会」は実質不可能です。さらに、私の承継当時は「自社都合で全員休みなど元請にどう思われるか」という忖度もありました。そこで全社員の役に立つ研修を常に探していますが、合致するものはそうはありません。そんな中、今年度ネットワーク工程管理実践研修が新たに開講されることを知りました。
 当社では、ここ数年2次、3次下請として大規模新築現場の仕事が増えました。当社が主に行う弱電工事は新築物件では最終工程となり、前工程の遅れを取り戻すべくしばしば長時間労働と根性で何とか工期を間に合わせます。この状況が常態化する根本原因を把握し対策を取りたいところですが、末端下請の立場では全体工程管理に口を出す機会も権限もなく、また職長もその手法を知りません(これに対する父の嘆きが、私が都市計画を志す源流だったかも知れません)。そこで、本研修で「下請工事屋が現場で振り回されないための知恵」を授かるべく、オーダーメイド研修を申し込みました。
 さて当日。過去には全体講習は「現場都合」での欠席や夜間作業徹夜明け出席などが散発していましたが、今回の研修目的はそうならないように考えるためです。昨年指導をお願いしたプロ人材からは「全社会議方針を示しても日常業務で徹底させていない」と、統制の甘さを指摘されたこともありました。
 さて、ネットワーク工程管理は施工管理技術検定試験の定番問題でもありますが、今回は試験対策の計算問題演習ではありません。講師はゼネコン設計OBで海外現場経験も豊富で、国内外現場の実情を理解されているとのこと。事前に提示した受講目的に対し、実際の講義では職長が現場でやることとして特に以下を力説いただきました。
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 ①変更指示は契約に基づき書面で受領すること
 ②これを受けて自社で可能な手法を検討し、自ら変更工程表を作成すること
 ③工程変更に伴う費用増加に関する見積を必ず添付すること

 私も元請(鉄道、投資ファンド)と下請(IT、工事)の両方の立場を経験しましたが、えてして発注側担当は個人の思い付きで指示を出し、受注側担当はそれを会社間の契約事項と勘違いして右往左往することが業界問わず行われているように感じます。これを元請側から見ると「個人的お願いに善意で応じてくれただけ」であり、追加費用は払われません。そして元請担当者は転職などで他を知る機会がなければ「世の中これが当然」と認識し、やがて下請いじめが始まります。
 研修は2日間行われましたが、両日とも終業後1時間延長で教室をお借りし、そのまま全社会議を行いました。小型風力発電工事の報告や千葉市補助金を活用して作成した当社BCPの説明、そして商工会議所連合会「若手社員定着セミナー」の発表報告を行いました。

千葉市役所「若手社員社員定着力向上ゼミ」

 千葉県商工会議所連合会では、中小企業の採用力向上支援としてリクルーター養成講座を無料開催しています。自社と自分のタイプと魅力と知り、またそれを社外求職者にアピールする手法を学ぶことを主眼にしており、出席者は目に見えて会社の捉え方が変わってきました。今年度もこれに2名参加しましたが、今後は管理職昇格研修として活用する予定です。
 これに関連し、今年度は若手社員定着力向上ゼミとしてレジリエンス(逆境力)をテーマにした講座が開催されました。嫌なことがあっても続けられる理由を会社の魅力として見出そうという主旨で、内容はリクルーター養成講座とほぼ同様です。こちらにも若手新入社員2名を申し込みましたが、1名が退社してしまい、中堅社員に代打をお願いしました。参加者の二宮さん曰く、当社の魅力は「会社が勉強させてくれること」とのことでした。研修を企画し続ける立場として、ちょっと嬉しかったです。

会社の魅力発表会

会社の魅力発表会


 2日目修了後は近所の焼き肉屋で新年会。ポリテクセンターまではバス利用となるため「飲み放題希望者は駅までタクシー可」としましたが、参加者の7割近くはドリンクバー&自家用車利用でした。「会社飲み」につられないのは、令和の職人あるあるかもしれません。