早いもので、中小企業診断士も3度目の登録更新を迎えます。

 中小企業診断士の登録有効期間は5年間。その更新には期間中に理論政策更新研修を5回受講することが要件とされています。かつては中小企業診断協会のみが講習を実施し毎年受講が必要でしたが、私が登録した頃に民間開放されました。当初は研修を主業とする小規模なコンサルティングファームや中小企業診断士受験予備校などが中心でしたが、その後参入撤退が行われながら徐々に増え、現在は6機関+中小企業大学校が実施しています。受講対象者=診断士有資格者は徐々に増えているようですが、それでも約25,000人×単価6,000円=1500万円のニッチ市場。研修自体の収益化は期待薄ですが、主催者としては潜在スキルをもつ診断士の組織化という目的もあるようです。なお、今年はコロナ禍対策でZoomを使ったオンライン研修も認められています。

 ところで、私はこれまで全機関の研修を受講しましたが、他にコンプリートしたという話を聞きません。診断士にはマーケティングの専門家も多く、皆新規の講習機関には興味あるはずと不思議に思っていましたが、実は誰もそこまで理論研修に思い入れはないようで、むしろ私が奇特だったようです。また、診断士は登録実習やその後の勉強会を通じて師弟関係に近い組織化が行われることも多く、年1回の理論研修が同窓会の場となる方々もいらっしゃるようです。かくいう私も、以前は師匠のお手伝いで運営側に回っていました。

さて、理論政策更新は通商産業省令で4時間と定められ、うち1時間は国の中小企業施策についての解説に充てられます。形式は各社各様で、大教室での講義形式を採る診断協会に対し、グループワークや、中には「人を見抜く研修」として人狼ゲームを取り入れるなど、各社とも飽きさせないように工夫を凝らしています。いずれの場合も冒頭の説明で、「遅刻、早退、中抜け」「居眠り」「読書」「内職」「PC、スマホ使用、ノートテイクも不可」と禁止事項が長々と伝えられます。中高生相手の生徒指導のようですが、受講者も研修講師を業とする中小企業診断士。色々経緯があったことを想起させます。

 そんなこんなで、各社の研修メニューを見るだけでも診断士業界のトレンドが見えてきますが、ここ数年で事業承継を扱う研修が増えており、当事者としてはやはり見逃せません。事業承継は、その支援相手により着目する内容が大きく異なります。伝統的なイメージは「愚息を鍛えてくれ」的な名門老舗の先代に対する相談対応業務でしょうか? しかしながら、承継者の立場からは外部環境の変化を無視した昔話にしか見えません。また、一時期は相続や債務整理といった財務系が脚光を浴びていましたが、その時は事業承継税制などを駆使する公認会計士や税理士が活躍していました。
 これに対し、大量廃業の危機が叫ばれた2017年中小企業白書の発行後、やっと我々事業承継者の立場が理解されてきたように感じています。自分がやりたいことを貫いて引退する創業者に対し、「やらされる側の身になってみろ!」と魂の叫びを持つ後継者は私だけではないはずです。とは言え、「職業:親父の息子」のままでは個人も会社も衰弱してしまいます。どこかで奮い立って知恵とエネルギーを絞り出すことになりますが、これはまさに経営革新です。

 今回、受講した日沖先生の講習は、事業承継の実情を踏まえ、徒にウケに走らない硬派かつ良心的なものでした。
 ところで、私のような「流れ者」は、理論研修のグループワークで仲間内に飛び入りで参加するような雰囲気になることもあります。今回は事業承継がテーマだったこともあり、期せずして支援専門家グループの中に当事者(私)が混ぜてもらう形となりました。皆さん事業承継協会という団体のメンバーとのことで、後日その会合「サステナックサロン」にもお誘いいただき、参加してきました。サロンでは、プレゼンテーションは事業承継や再生支援の他、ベンチャー実務家によるビジネスモデル提案もあり、久しぶりに他業の事例研究に接して刺激を受けました。また、その後の懇親会では、事業承継支援専門家皆さんにクライアントモードで相談に乗ってもらいました。

懇親会は21時30分と早めにお開きになりました。コロナ禍第3波が来る直前で開催判断が難しいところだったと思いますが、主催者をはじめ参加された皆様お疲れ様でした。
そして私は、この後次の研修に向けて移動を開始しました。続きはこちら