私事ながら、毎日自動車で通勤しています。朝は経理担当の嫁と夫婦同乗、帰りはどちらかがバスで帰っています。承継直後は子供の帰宅に合わせて嫁が自動車で帰り私がバスで帰宅していましたが、19時台の最終便に間に合わないこともままあります。そのときは最終退社者の車に乗せてもらい、通りがかりのバス停で下ろしてもらっていました。その後、路線バスの減便(1日12往復→8往復)に伴い嫁の帰宅時間帯に合った便が設定され、以後は専ら私が車を使っています。
 また、嫁の出勤日に私が外回り後出社する場合、バスを利用することもあります。最寄りの鎌取駅からタクシー(1500円)や徒歩(45分)、短時間で往復するならタイムシェア車を使うこともありますが、せっかくバスが事務所近くを通るのに使わないのはもったいない。地域事情を考えても、私がバスを利用しないとさらなる減便や廃止されかねません。実際に、隣駅から同方向に向かうバス(誉田駅―千葉東霊園)は数年前に廃止されてしまいました。
 先日は朝一で役所回りをして午前便に間に合わなくなってしまい、ふと思いついて検索すると、千葉市若葉区のコミュニティバスを利用して帰れることが判明しました。

©ジョルダン乗換案内 このルートは他では検索されない

map ©ジョルダン 他サイトでは検索不能の希少ルート
地図は@google


 このコミュニティバスは、元々は千葉駅発吉倉経由八街駅行バス路線の廃止の代替として設定されたものです。バス路線は結構頻繁に改廃がありますが、特に2002年自由化以降は長距離路線が多く廃止されました。また、この地域ではモノレール開通による公共交通体制整備により、千城台駅を起点して整備するとともに、バス乗継には割引制度も用意しています。
コミュニティバス乗継割引券

コミュニティバス乗継割引券


 乗換の熊野神社バス停は谷津の中。県道沿いでかつては千葉駅からも直行バスが出ていました。実家の大宮台への引っ越し直後、母の探検に連れられてここまで来て、あまりの辺鄙さに母が驚いていた記憶があります。その10年後、まさか当社が引っ越してくるとは思いもしませんでした。
県道沿いのバス折返し場

「熊野神社」県道沿いのバス折返し場

 さて、実際にバスに乗ると、改めてバス路線は生活圏を表すことに気づかされます。資材搬送等で千葉県郊外の現場に行く際、ついバス停に目が留まり、時刻表を見てくることもあります。人がいないようなバス停に、1日バスが数本だけ。いわゆる「免許維持路線」ですが、それでも廃止されない理由があるはずです。誰が、誰がどんな用事でこのバスに乗るのか、始点と終点でどんな交流があるのか、そこにある(かも知れない)ドラマを夢想して旅情に浸っています。

通りがかった南房総市のバス終点「大井細田」

館山駅まで1日1本、千歳駅まで2本
通りがかった南房総市のバス終点「大井細田」
館山駅まで1日1本、千歳駅まで2本

 もっとも、そのような地域では実際には車中心の社会です。当社のある千葉市若葉区、緑区も車社会であり、両親もそれぞれ3.5kmほどの距離を自家用車で通勤していました。これに対し私の住む美浜区は都内通勤の千葉都民が多く電車中心の生活。同じ市内ながらもはや文化圏が違います。両親は我々夫婦にも車通勤を勧めてきましたが、家業承継後程なく父が運転できなくなりました。車依存のリスクを改めて思い知りましたが、本人は意に介さず、暇に任せて毎日徒歩通勤していました。
 ところで、千葉市の都市計画では、人口減少に備えた立地適正化の中で、居住に適した「公共交通サービスの水準の高い地域」として、1日30本以上電車が通る駅から800m、同じくバス停から300m以内の地域を挙げています。これについて、以前都市計画審議会で「電車文化圏住民としては納得できるが、車文化圏住民にとっては関係ない話ではないか」と質問したところ、「まちの集約化に理解を得ること自体が難しい課題」と回答されました。
 最後に、コロナ禍に伴い、当社本社(実家)のある大宮台の立地が見直されているようです。千葉駅からバスで30分近くかかり、電車文化圏的に長く「陸の孤島」と呼ばれていましたが、地元不動産屋曰く、高速道路インターが近く車文化圏的にセカンドハウスとして人気が出ているとのこと。ちなみに、私が通った東工大には多くの高校同級生が進学しましたが、見事に電車文化圏居住者は自宅通学、車文化圏は都内独り暮らしと分かれました。その境界は千葉駅で、私も当然下宿組でした。