4年前に東京都市大学での小型風力発電実験設備工事でお世話になったゼファー株式会社から、新たな工事依頼をいただきました。
 現在同社は中型風力発電工事を開発中とのこと。出力は50kWで、戸建て住宅10軒ほどの電力が賄える計算になります。発電機には電気自動車のモーターを転用しているそうですが、確かにモーターは逆に使えば発電機。「言われてみると納得」と感心するばかりです。
 この設置工事について久保社長からは「いずれお願い」とお声がけをいただいていましたが、今回初の案件として提示された現場は畑と工場が混在する東京都西多摩郡瑞穂町の郊外住宅地でした。

新技術の社会実装と3つの壁

 東京都では、次世代再生可能エネルギー発電技術の早期社会実装に向け、都内をフィールドとして次世代再生可能エネルギー技術社会実装推進事業を実施していますが、令和6年度には同社の風力発電設備が採択され、発電性能、量産・施工技術向上とともに社会受容性の評価を実施することとなりました。
 ゼファー社プレスリリースによると、再生エネルギーとして有望視され続けてきた風力発電が実際に普及に至るまで3つの壁があったそうです。
1.外観、騒音…中型風力発電設備は、風車の軸まで高さ20m、羽根の上までの全高は30mを超えます。風切り音や振動など周囲に与える影響も、やはり小型風力発電設備とはけた違いとのこと。また、シャドーフリッカー(影のちらつき)も無視できない影響があるそうです。
2.気象条件…安定した偏西風がある欧州と比べ、日本で発電に使える風力を求めると山岳地や島しょ部となり、乱流で発電予測が困難かつ故障による休止も多くなるようです。
3.系統への影響…電気は常に需要と供給のバランスをとる必要があり、従来は集中制御可能な火力発電がこれを担ってきました。他方、風力や太陽光など発電で生じた余剰電力は、一般的には通常送配電事業者(関東地区は東京電力パワーグリッド)を介して売電や託送などのために系統連系を行います。具体的には眼前を通る電線に発電設備を接続しますが、当然容量に制限があります。

 これに対し、ゼファー社はこれらの課題を「低騒音・高乱流対応・系統負荷低減型」風力発電機によって解決することを目標として、多摩エリアの経済活動拠点において次世代風力発電機の設置および性能評価、さらには「騒音」などに関するアンケートなどに行い、社会実装試験を行いました。そして当社は、その配線工事を請け負うこととなりました。

3年ぶりの現場出動

 とはいえ、当社がこれまで扱った小型風力発電設備とは規模がちがいます。紆余曲折の段取りを経て、1月末に実際の電気工事を施工する目途がつきました。しかしながら、時はまさに年度末の最繁忙期。特に昨年度からの働き方改革規制で長時間労働ができず、とにかく人手が足りません。当社も例外ではなく、大型物件に対し総動員状態。ついに私も、東京都市大での小型発電工事以来3年ぶりに施工担当として出動することとなりました。
 一口に電気工事といっても、盤内結線や壁貫通など技術と経験を伴う「職人技」が必要な作業ばかりではありません。「ころがし」と呼ばれる屋外露出配管や、接地極埋設もあります。接地(アース)は雷や機器からの漏電などで生じた電流を安全に地中まで流すための設備です。いくつか種類があり根拠法令も異なりますが、今回仕様では大型銅板を埋設すべく深さ2m程度まで穴を掘る必要があります。

90㎝角の銅板の接地極埋設

90㎝角の銅板の接地極埋設、まだ深さが足りない

次男、現場デビュー

 作業日程は土日を挟んで4日間。そこで後半は、ちょうど18歳の誕生日を迎え、昨年10月には進学先も決まり高校卒業休みで暇そうな次男を駆り出しました。
 週明け、千葉から外環、関越、圏央道を通り100㎞を渋滞に遭いながら2時間弱で到着。偶然にも学生時代に現場近くまで家庭教師のアルバイトで通っていました。当時は高速道路もなくバイクでひたすら青梅街道を走っていましたが、格段に便利になりました。現場でゼファー社の皆さんに次男を紹介、安全と作業内容を確認します。
次男は接地極埋設の穴掘りに加え、電線の配線や接地抵抗の計測などの作業補助に入ります。作業も順調に進んだことから、最終日に備える本職3名を残し、次男と私は電車で2時間かけて帰宅しました。

風車内に計測機器搬入

風車内に計測機器搬入

高さ30mの風車稼働

 当社作業時点では、まだ風車の羽は取り付けられていませんでした。そこで、中型風力発電の実物を一目拝もうと、その後何度か現地に足を運びました。
 そこで現場でフルハーネスを装着して頂部で作業するのは、なんと久保社長!これぞ、社会起業家のベンチャースピリッツ!戦う姿で、闘魂を注入いただきました。

風車に上るゼファー久保社長

風車に上るゼファー久保社長


 そして完成、高さ30mの風車はやはり目立ちます。前述の通り、今回の目的は「社会実装」であることから、稼働はゼファー社担当の立ち合い時のみで、せっかく発電した電気も前述の通り電熱器で捨ててしまうとのこと。これが「屋根上ソーラー」と同じように街で普通に見かける日を夢見て、ゼファー社の皆さんは日々研究を続けています。

 当社創業者の亡父は、若い時から自然エネルギーに将来を見出していたそうで、いち早く屋根上太陽光発電に取り組んでいました。当時の投資回収期間は30年以上という道楽レベルでしたが、それに共感するお客様と関係を構築していたようです。現在はメガソーラーなどビジネススキームが整備されるにつれて環境負荷の問題など副作用も生じていますが、自然エネルギーの地産地消に向けて父が夢見た世界の実現に一歩近づき、微力ながらそのお手伝いができていると考えると、私も次男も「爺ちゃん孝行」したかもしれません。