12月は、電気自動車(EV)充電設備の工事が続きました。
 EV充電設備は、普通充電と急速充電設備に大別されます。普通充電は、原理的には携帯電話などの充電と同じです。コンセントにアダプターを差し込み、それを車につなぎます。電圧は主に200V。よく見かける普通のコンセントは100Vですが、家庭でもエアコン用などで使われています。コンセントの形は”- -“で100Vの”| |”とは異なるため、間違うことはないでしょう。また、電流は電線の許容制限から15Aの場合が多く、その消費電力は「200Vx15A=3000W=3kW」となります。これに時間をかけると電力量(kWh)になり、電気料金の基準です。中学理科で習う身近な内容ですが、意外と忘れている人も多いのではないでしょうか?
 これに対し、充電されるEVの電池容量は、例えば当社で使用する日産リーフe+なら62kWh、3kWでの充電では0 から満充電まではほぼ1日(21時間弱)かかります。とは言え、走行距離は公称458km(WLTCモード)あるので、余程の長距離を毎日走らない限り、自分の駐車場で一晩充電しておけば翌日の走行には支障がありません。このため、EVに乗るなら充電設備はセットで準備したいところですが、月極駐車場やマンションなど借りている場所では勝手に設置するわけにもいかず、その普及が課題とされています。最近では来店客向けに充電設備を設置する商業施設も増えました。時間消費型施設では滞在時間の延長による客単価の向上に役立てているのかもしれません。
 一方、急速充電は高電圧、大電流で一気に充電します。高速道路のサービスエリアやコンビニ駐車場などでよく見かける共通規格CHAdeMOやテスラなどのコネクタが数種類あります。本来の用途は長距離移動の際に短時間で行う経路充電ですが、EV購入時に充電設備利用カードを購入し、これでガソリンスタンドのように充電する方もいるようです。また、少数ながら環境目的でのEV普及を目的として無料で利用充電できる公共施設もあり、私も千葉市内3カ所でお世話になっています。ただし、急速充電は「電池に優しくない」のは確かなので、その点を心得て使いたいところです。
 なお、充電設備の設置については、そのタイプや設置者に応じて国や自治体等による補助金が多く設定されています。これらは年度ごとに設定されますが毎年大変人気で、ほとんどが発表後応募期限を待たず早々に締め切られます。当社でもお客様からお問い合わせをいただいた時には「残念ながら予算切れ〆切」ということも多いです。さらに、補助金申請が採択された場合も設置期限が設定され、担当者は2023年末EV設置工事に掛かりきりになりました。

商業施設の駐車場にも急速充電設備

商業施設の駐車場にも急速充電設備


 その中に、何とEV路線バス用の充電設備工事も含まれていました。しかもここはバス好きならご存知、日本最長の走行距離を誇るキングオブ深夜バスはかた号の東京泊地でもあります! 私もサラリーマン時代の出張帰りにお世話になりました。せっかくの機会、現地を一目見ようと抜き打ちで訪ねました。工事会社代表の立場で安全巡視も行いますが、今回のような下請工事の場合、元請電気工事会社が現場を統括しているので必要ではありません。さらに、交通業では「撮り○○」などのマニアも多く、当社担当曰く「今回はいつにも増して現場管理が厳密」とのこと。ここは一通行人としてバス営業所隣接の駅付近をブラつき、鉄道に設置されたPDCEを眺めながら、可能であれば道路から遠目に現場を見学することにしました。
EV充電器設置は道路から見える場所に

EV充電器設置は道路から見える場所に


 すると、営業所一番手前の入口付近で設置工事の真っ最中。元請会社の東電タウンプランニング担当氏、発注者の技術主任様もお揃いです。そこで当社の施工を横目に自己紹介。私も初職はバス部門がある鉄道会社。入社当時は既に分社化されていましたが、以前はバス営業所で新人研修を行っていたそうで、経験した先輩の話によると「鉄道駅務に近い雰囲気」とのこと。また、本配属されたたまプラーザ東急SC(現東急百貨店たまプラーザ店)の駐車場責任者もバス営業所のOBでした。渋滞下での交通誘導やお客様同士のトラブルなど日々クレームが寄せられますが、その中には対応のしようがないものも少なからず含まれています。それを踏まえた上で泰然と指示を出す姿はまさに「親分」そのもの。歩行者の行き交う狭い路上を走る大型バスの運転は、どれほど安全対策を施しても万全はないことでしょう。そんなバス営業所ではどんな修羅場をくぐってきたのか、新入社員の小僧としては畏敬の念を抱いていました。
 そんな話の後、EVバスについてお話を伺いました。同営業所では今後充電設備がフル稼働するようです。さらに、その隣には水素EVが駐車しています。そこで水素ステーションが近くにあるか見回すと、何と豊洲まで充填に行くとのこと。050系統として運行路線途中のバスタ八重洲から回送するとのことですが、大型車対応の水素ステーションが少ないため、そこで待つことも多いそうです。最近何かと注目を浴びる水素自動車ですが、普及にはEV充電設備と同様にインフラ整備が課題なのかもしれません。
元請担当氏による施工確認 後ろには水素バス

元請担当氏による施工確認 後ろには水素バス


 そんな話をしているうちに、当社メンバーは充電設備への高圧ケーブルつなぎ込みなど午前の作業が終了。いつの間にか都内城西地域に現れた私に驚きながら、「冷やかし禁止」と笑っていました。最後に東京電力による系統連携工事が行われますが、これはバス営業終了後の深夜です。さすがに私はこれに立ち合いませんでしたが、無事に年明けから稼働しているとのことで、近いうちに見学に行こうと思います。沿線の皆さんも、EVバスの静かな乗り心地を体験してみてはいかがでしょうか。