年度が替わり、元号も決まりました。
 当社は現在5月決算になって初年度。これまでは期首が書き入れ時の3月だったため月次損益は「スタートダッシュ型」でしたが、今年は勝手が違います。閑散期の6月にスロースタートし、3月にピークを迎え、GWを過ぎて再び閑散期に入った5月にゴール。競輪風に言うと「第4コーナーまくり型」になりそうです。今年も今がフルパワー。あとはゴールまで何とか失速を抑えて流れ込めれば、、、

 家業に入ってこんな生活を始めて早5年になりますが、事業承継はどこも大変です。当社より経営規模の小さい企業では黒字企業も多くが廃業していることが、中小企業白書などでは問題視され、M&Aなどによる第三者承継などが提起されています。しかしながら、「誰かやって!」という声が上がるということは、それだけやり手がいないということ。最近は大手コンビニのフランチャイズ問題も取り上げられていますが、資本主義社会である限り、業種を問わず小規模企業はあらゆる面でハンデを負うことは、誤魔化しようがありません。私も子供の頃は父を見て「勉強して良い大学に行って良い会社のサラリーマンになる!」と公言していました。今は中学生の長男が同じようなことを言い出しています。
 それでは、上場した大会社を承継すると安泰か、というとそうでもないようです。3月末の日曜日に「日本で一番熱い」事業承継企業(?)、大塚家具の株主総会に行ってきました。

 私が当社に入ったころ、同社の問題が「究極の父娘けんか」として面白おかしく取り上げられ始めていました。世間の同情も父方に軍配が上がっていたように思います。一方の「娘方」大塚久美子社長は一橋大学を出て富士銀行(当時)を経て家業に入った「事業承継の先輩」。同社と当社とは彼我で売上3桁、資本金4桁の違いはあるものの、どうしても他人事と思えません。事業承継したら自分がどのような目に遭うのか、ケーススタディの授業料として同社株式を買い、可能な限り株主総会に出席しています。
 同社の問題に関しては、様々な切り口から取り上げられています。そして父による競合企業の設立や外国資本の受入等、今なお大きな動きの中にあります。そして上場企業役員は当然業績によって評価されます。昨年は、株主質問で決算数値分析を基に「百貨店をコンビニに業態転換する意味があるのか?」旨の質問もありました。今年は大規模な増資により既存株主の権利が希薄化され、無配転落と併せて株価も急落しています。ネットや雑誌記事などでは、企業継続や社長自身の経営能力にも疑問が呈せられています。私も、あの立場にいてなお当社の経営を続ようとする意思を保てるとは思えません。そもそも、父のビジネスモデルが古く先がないのであれば、さっさと見切って離れば良いのではないか、とも思います。

 それでも、会社は続いていきます。株主総会では取締役選任について父と仲直りして取締役に加える緊急動議が出されましたが、会社原案通り可決されました。社長続投はただの意地かもしれませんし、相続対策で背負った負債のせいかもしれません。しかしながら、会社を背負いあるべき姿を追い求める覚悟は、私とは桁違いであることは思い知りました。株主総会最後の質問は、「何より大事なことは会社を潰さないこと。そのための猶予はないが、古き良き時代は終わったことを自覚している貴方に、皆は賭けたのだ」との言葉で締めくくられました。
 翻ってみると、当社の株主は現在母と私の二人だけ。総会(@本店兼実家)では改革が性急すぎるとお叱りを受けたこともあります。しかしながら、新しい時代に向けて企業の生き残りを使命と考えると、結果的には5年間温く現状維持に甘んじてきたことに独り危機感を持ち、お土産として家具のカタログ受け取り会場を後にしました。

 帰り道、NHK記者の取材を受けました。休日に任せて髭も剃らずボサボサ髪でカメラの前に立つのは気が引けましたが、敢えて事業承継者目線と断りを入れて上記主旨でインタビューに答えました。当然TV映えのする画&回答にはならず、案の定当日夜のニュースでは他の方の映像が流れていました。